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「大人は判ってくれない」 仏映画


大人は判ってくれない (原題Les Quatre Cents Coups) 1959年 フランス 監督フランソワ・トリュフォー


ヌーヴェルヴァーグの新鋭フランソワ・トリュフォーの初監督作品。この時代の映画はセットで撮影することが多かったらしいのですが、このトリュフォーの作品はそれまでの在り方を覆して全てロケで撮影されたそう。

少し逸れますが、風と共に去りぬを映画で観たとき、戦火で逃れるシーンのセット感がすごく現れていて、逆にそこに時代を感じました。でも原作のほうが好きかな。

主役は12歳のアントワーヌという不良少年。なのですが、そこまで不良少年でもないじゃないか・・と個人的には感じました。だって、家に帰れば夕食の準備をしなければならない、母親はいつも辛くあたってくる。そして継父は母親の顔色を伺うばかり、眠る場所も玄関の前のソファ。ゴミ捨てや片付けをさせられて、どうやっても勉強らしいことは出来ない環境。宿題をしてると「そんなことしてないで夕食の片づけをしなさい」なんて言われて、宿題を隠さなくちゃならない。

毎日が憂鬱なら遊んで気持ちを晴らしたいと思うだろう・・12歳なんて遊び盛りだもの。

そしてある日、登校中に友達と一緒に学校をサボって一日遊び倒すアントワーヌ。

学校にそれがバレた時「お母さんが死んだから」とウソをつくのだけど、それが両親に知られて学校で父親に殴られる。
それからアントワーヌは家に戻らなかった。

それから一度母親に連れ戻されて、優しく励まされ、受け入れられるのだけどすでにアントワーヌの心は開かない。

12歳の年頃は、心がふわふわのスポンジのようにどんな事でも吸収してしまう。嫌なことも、良いことも。まだ完成していない自分へ無防備に混ざり込んで、どんどん自分というものが出来上がる。その絵具を外から降らせているのは、沢山の大人。沢山の出来事。沢山の経験。

嫌だと思う気持ち・・これは自然なもの。大人の身勝手で、多くの子どもは右へ行かされたり左へ行かされたりする。

そしてアントワーヌはまた家出をし、食べていくために父親の会社からタイプライターを盗み、お金に替えようとするのだけどうまくいかず、それを戻しに来たところで父親の同僚に見つかってしまう。そして終いに両親から見放され、少年鑑別所へ入ることに。

しばらくして面会に来た母親は「あなたにはここが似合っている。一人で生きたいんでしょ?もう戻ってこないで」とアントワーヌを冷たく突き放す。

それを聴いたアントワーヌが動揺しないのは、もう解りきったことだと悟っていたからだろう。なんかね・・、腹立ってきますね・・大人に対して。

ずっと海に憧れていたアントワーヌがサッカー中に鑑別所から脱走し、海岸を駆けていく姿。淋しさが漂いながらも、晴れ晴れしく、そしてもの悲しい。海からこちらに振り返ったアントワーヌの表情は「大人は判ってくれない」そのもの・・でした。

どうしても、子どもの頃のやるせなさを再び感じてしまう。子どもの頃は大人には白と黒があると思っていたから。プラスの人とマイナスの人。与える人と奪う人。そういう直感は子どもの天賦。

そして何より、このアントワーヌがフランソワトリュフォー自身ですってよ。両親の愛に恵まれず問題児となったトリュフォーはやがて、映画を通して自身の居場所を見つけていく。そんな自身を描いた自伝的作品。

きっと彼自身が癒されることでもあったのだろうと思う。自分を描き出し、そしてそれを大切に写し撮る。かつての自分を慰め、撮ることで救われた部分もきっと大きかったんじゃないかと想像しました。(このへんはウディアレンにも重なる部分があるかもしれませんね)

それから、モノクロ映像のの美しさ。もの悲しさ。時代を感じる町並み。アントワーヌの黒いタートル。

冷ややかで、涼しく悲しい。そんな作品だと感じました。

・ちなみに原題の(Les Quatre Cents Coups)は「400回の打撃」という意味です。

400回・・。そんなに大人は判ってくれないということなのか・・。


 

「イヴサンローラン」 仏映画


イヴ・サンローラン   2014年 フランス 監督 ジャリル・レスペール


心待ちにしていたこの作品、有楽町まで観に行ってきました。

美しいものが生まれる裏側の部分を垣間見た気持ちです。
自分の名のメゾンを立ち上げ、成功に達するまでを知ることができ良かった反面、そこに至るまでの苦境とそれからのイヴには胸が痛みました・・

21歳でクリスチャンディオール亡き後のメゾンを継ぎ、若くして重い責任を負うこととなるイヴ。ディオールからの信頼の厚さが必然的にそうさせたのでしょう。が「デザインすること以外は何も出来ない!」とキレてかかるイヴに少なからず同情を覚えました。
才能があることとうまく生きることというのは、反比例してしまうものじゃないかなと感じました。

ディオール就任後、イヴを苦しめたのは国から届いた召集令状。国民としての義務よりも仕事を選びたい、銃なんか持ちたくないというイヴの葛藤が強く伝わってきました。その願いも空しく軍に就くことになった後まもなく、精神を病み、見舞いにきたピエールからも距離を置き、やがてディオールから解雇されるのです。精神科にかかった事実がメゾンにふさわしくないという理由で・・

パートナーのピエールとはある集まりで出会い、お互いに惹かれ合いいつしか屋根を一つにします。イヴにピエールがいなかったら彼はとうにこわれていた、または復活できなかったんじゃないかと改めて思います。どんな時でも慈愛と忍耐の眼差しでイヴを見守るピエール。時に、イヴが死ぬまでだったかもしれませんが、イヴを手中から外へ出さず、束縛の糸をいつもイヴにからめていたピエール。

この二人の恋愛だけでもう一つ物語ができそうなほど、深くて信頼と重さと無二の関係だったんですね。

ピエールが常にイヴを支え、ディオールを契約不履行で訴え勝訴し、やがてイヴサンローラン自らのメゾンを二人で立ち上げます。ピエールは「自分には何もない、才能もない」と言い、イヴは「自分一人じゃ何もできない、全て君のおかげだ」と言う場面が耳に残ります。

繊細な感性と高い美意識、許せるものと許せないもの、才能にあふれすぎたために失うもの、イヴにしか解らないと思われる苦悩と不幸、若い頃、若さを満喫できなかったことへの想い、その苦しさから逃れるためダークサイドに堕ちていくイヴ。
自分が傷つくことが起ころうと、時に涙を飲みイヴが好意を抱く相手を攻撃し、イヴを目のすみから逃さないピエール。怖ささえ漂う程、二人は人生を分かち合っていたことが伝わってきました。

イヴの亡き後、ピエールは現在もアーティストに強い理解を示し様々な協力をしているそうです。

ピエールは「アーティストは孤独だ。彼らには自由が与えらえなくてはならない」と言っています。


イヴサンローランを演じたのは、フランスの若手俳優ピエール・ニネ。


ピエール・ニネ 1989年 3月13日生 

映画を観た後、ピエールニネのインタビュー記事を読んで彼の写真を観た時、(イブサンローランのほうが似合ってる!)と訳の解らぬ印象を覚えました。それほどイヴサンローランだったのですよ。映画の中でね。

イヴサンローランとの共通点を聞かれ、彼は「ないんです。一つそうかもしれないのは、二人とも若くして天職に就いたことかな。もちろん、劇団員のボクと彼とでは規模がちがうけどね」と。

撮影の準備期間中、イヴの会話を毎日聴いて内に籠った話し方を身に着けデッサンの描き方もマスターし、作品中も本人が描いてるそうです。繊細なイヴサンローラン、エレガントで知的でナイーブ。ピエールニネのイヴサンローランはとても美しかった。

ちなみに作品中のドレス、全て本物を財団から借りたのだそうです。ドレスだけでも一見の価値ありです!





 

「気狂いピエロ」 仏映画


気狂いピエロ Pierrot Le Fou 1965年 フランス イタリア ジャン=リュック ゴダール


先日気狂いピエロを観ました。

この作品は昔から知っていたのに、なぜか観ないままでいましてね。
知ったきっかけというのは、三重県に住んでた頃に駅の横にあった喫茶店の名が「気狂いピエロ」でした。
20歳くらいの時でしたが、まさか映画の名前と思わず、気狂いに似つかわしくない美味しいご飯で不思議なインパクトがあったのを思い出します・・

映画は、妻に愛情を感じない男(ジャンポール・ベルモンド)と、その元愛人(アンナ・カリーナ)が、犯罪から逃れ南仏に逃亡する話。

ストーリー的にはそうなっているのですが、随所随所で(なんでここに死体・・)(あれ、こっちに語りかけてる・・)ど、非典型的な流れでもってすすんでいきます。フランス映画のエッセンスが凝縮されていてわたし的に大好きな作品でした。(理屈が要らないし、観る人によって千差万別でしょうけども)



アンナカリーナの魅力がこれでもかというほど散りばめられてます。

ちなみに上の写真のポストカードを、これまた20歳くらいの時にお台場のヴィレッジヴァンガードで買ってましてね。
まさか、この場面のシーンだとは知らず思わずびっくりしました。。

「わたしの運命線はこんなにも短いの〜」と歌い、「どうしたらいいの〜、どうにもならないの〜」と

自由気ままに歌い、南仏で魚を取って暮らすのも、状況は違うけど何となくフランソワ・サガンと重なって見えました。



二人でお金を稼ごうとアメリカ兵とベトナム人を演じて、アメリカ人からチップをもらうシーン。

このアンナカリーナ、さすが。言い回しも滑稽で。。



ラストは、アンナカリーナに裏切られ嫌気がさしたジャンポールベルモンドはアンナカリーナを射殺。

そして自分も同化師のように顔にペンキを塗り、ダイナマイトを顔に巻いて自殺を図ろうと火を付けます。が、すぐにしまった!と、火をもみ消そうとするも間に合わず、爆死を遂げます。

ふー・・なんという人生・・。

ちなみにアンナカリーナの名付け親は、ココシャネルだそう。

ああ、9月に公開されるイヴサンローランが待ち遠しいな〜。

 
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